千葉県千葉市の加藤歯科・歯科医・歯医者では根の治療-根管治療を行っております。
2013.10
先日、そろそろ寝ようかと思っていると電話がかかってきました。
前に住んでいたマンションのお友達の奥様からでした。今は引っ越して都内に住んでいます。何事かと思ったら、治療の相談でした。
御主人が歯の具合が悪く、治療を受けようと思って仕事場の近くの歯科医院に行ったんだそうです。
そうしたら「根の治療(根管治療といいます)をやり直さないといけない、そして被せるまで治療すると1本30万円かかる」と言われたのだそうです。さらにそういう「根の問題」を持つ歯が6本あるそうです。奥様の頭の中で30x7=210の計算式が完成したんでしょう。(笑)実は、近頃いろいろなところで根管治療の話を耳にします。
ちょっと前までは歯の話題といえば「インプラント」でしたが、ここ2年ぐらいでインプラントの失敗の話が出てきて、インプラント神話が崩れたことによるのでしょう。
「インプラントを入れれば一生使える」ハズでしたが、そうじゃないことがハッキリしたということですね。まあ、賢明な皆様は、かとう歯科からうるさく定期検診のメールがやって来る本当の理由に気付いたことでしょう。口腔内に歯周病の悪玉菌を持っている人が定期検診を受けずにいるとどうなるか・・・。
火を見るよりも明らかです。マジメに定期検診を受けていて、なんとか越えることのできる危ない橋を渡っている事実に。
インプラントは虫歯にはならないけど、ちゃんと歯周病には罹りますからね。まあ、これを読んで頂いている方はマジメな側にいる方がほとんどですから、私も安心してホントのことを言っちゃいますけど。(笑)
結局、以前は全く語られることのなかった根管治療の話を歯医者が口にするようになったのは「インプラントが不完全なモノである」ことがバレちゃったからです。うちでインプラントを受けた方は「天然歯が一番。インプラントは歯の代わりじゃなくて、歯の無いところの代わり」というセリフを聞いたことがあると思います。インプラントは入れ歯よりもブリッジよりも良いけど、天然歯の方がもっと良いということです。今まで根の治療のことを全く語らなかった歯医者がここへ来て急に「自費の根の治療」を薦めるようになったのはそういうわけです。「あれ?根の治療って保険でできるよね。」と思った方は正解です。正解ですが、ここに日本の歯科医療の大きな問題があります。下の話はフィクションですが・・・。
あなたはニューヨークにいます。
ある晩、奥歯が痛くて痛くてしょうがありません。夜も眠れない。アメリカの歯医者は高いって聞いているけど、翌朝しかたなく行ってみました。どうやら神経を取らなくちゃいけないようです。 さて、アメリカの都市部で歯内療法(根管治療)専門医で神経を取る治療をしてもらったら、いくらぐらいかかるでしょう?驚かないでくださいね。3000ドルです。今なら30万円。なんと、同時刻にあなたの奥さんの同じ歯が痛み出し同じ治療が必要になりました。家族は千葉市美浜区に住んでいます。奥さんは一晩ガマンして、かとう歯科にやってきました。さあ、いくらかかるでしょう??なんと、福沢諭吉一人分でおつりが来ます。ウチだけじゃありませんが、日本の保険だと1万円ぐらいです。痛みを我慢し続け、飛行機に乗って帰ってきた方がお金は掛からない・・・。(笑)
東京とニューヨークは物価が同じぐらいです。それなのにこの30倍の価格差は不思議ですよね??30ー1=29。・・・・。29はいったいどうやって解消されたのでしょう??短時間での手抜き工事?不完全な後始末?いつまでも終わらない根の治療?新人の練習台?・・・。(汗)同業者としては言いにくいけど全部正解かもね。冒頭に紹介した友達からの電話は自費で根管治療する先生の話です。私も同じ治療をしたら自費でお金もらえるんでしょうか?友達の話によると、あちらの歯医者さんは銀座にあって、美人の女医さんで、受付も若くて美人でスタイルが良くて・・・。でも、なんだかスッキリしませんね??私は歯内療法の専門医じゃないけど、歯科用顕微鏡も使うし、とっても上手です。(笑)
たいてい、新しく来た衛生士さんに褒められます。業界人が見てすごく上手でも、保険治療でやってます。保険で請求するか、自費で請求するかは、技術の高低じゃなく、医院の所在地とスタッフの色気とスタイルで決まる・・??それじゃ、今の態勢なら、永遠に保険。(笑)
正直なところ、歯内療法を本気で自費にしようと思った時期もあります。数年前に高額な歯科用顕微鏡を導入し、今まで手作業でやっていたことを電動の機械作業に替えたときにかなり悩みました。手でやる以上に精度が高く、予後がすばらしいんです。しかし、その時点では1本2000円の道具を6本使うシステムでしたので、材料費だけで12000円。アメリカならば使い捨てです。30万円ならそれでも充分にペイするからね。日本の保険じゃ道具代もでません。保険で使うなら使い回しをすることになります。当然、滅菌しますけど、金属だからいつか折れてしまいます。
とっても素晴らしいシステムなのに日本の保険じゃ問題山積。戦後60年以上変わらない手作業による治療が「保険治療」の限界なんでしょう。「消耗品が多く、精度の高い治療は自費にしなさい」ってことでしょうかねえ・・・。悩み深いです。そんな悩みを抱えつつ保険診療でハイレベルな根管治療をしていましたが、近頃、同じメーカーから進化型が発売されました。モーターが1/4逆回転しながら削るので折れにくい、さらに治療に1本(1500円)しか使わないのです。使用機材の入れ替えに、またお金かかるけど(涙)、原材料費12,000円が1,500円になりました。ええーっ!安いじゃん!!これなら私にもメリットがあるし、患者さんにも大きなメリットになります。
歯ブラシのように、患者さんに1本買ってもらえば良いんです。使い回しはしないし、 毎回新品だから、折れる心配もとっても少ない。アメリカで大臼歯1本30万円の治療が、なんと保険負担金プラス1500円でできることになります。ああ・・・、いつの間にか、儲け損なった。(涙)でも、いいです、最高レベルの治療をお金のことを気にしないで提供できる幸福感の方がはるかに大きいですから・・・。
これだけハイレベルな歯内療法だということを御理解ください。ええ?「この記事は何だ!」って??決まってるじゃない。ただの自慢ですよ、自慢。(笑)
前のネタにも書きましたが「インプラント神話の崩壊」はかなり広まっている感じです。
「インプラントは素晴らしい」から「インプラントは怖い」への風評の変化の早さもビックリですが、それにキチンと対応する歯医者の発想にも脱帽です。私としては「インプラントも100点ではない」ということにみんなが気付いてくれたことは非常に良いことだと思っています。「自分の歯を大事にすること」こそ本来の姿だからです。歯周病治療の重要性を認識してくれるのかな・・。(笑)
奥歯のない患者さんへ治療の必要性を説明するのは非常に難しいことです。「奥歯はたくさんあるから、1本ぐらい無くても大丈夫。」と思ってませんか?実は、奥歯が1本抜けるとまわりの歯が動いて噛み合わせが崩れてしまいます。崩れた噛み合わせは最終的に鼻からアゴまでの「高さ」を失うことになります。「老人様顔貌」は実年齢とは無関係で、この「高さ」が失われた時に起きる現象です。「シワ」「尖ったアゴ」「たるみ」「深いほうれい線」などの原因はここにあります。この「高さ」こそが、世の中の女性が生涯追い求める「若さ」と深い関係があることは理解していただけるんじゃないでしょうか。美の根源は「高い化粧品」ではなく、奥歯が必死に維持する「高さ」なのです。
個人的な感想を言えば、 高さを維持する方法として、 神経の生きている天然の歯を100として、チタンインプラントは75、神経のない歯は70、ブリッジにした場合は50、入れ歯は20かな?
うちでは「インプラントにしようか」悩んでいる方には入れ歯を保険で作って、実際に使ってみてもらいます。それでOKなら当面は入れ歯で良いんじゃないでしょうか?実際に入れ歯を使ってみないとインプラントの良さがわかりません。患者さんに実際に使わせると入れ歯の問題点をたくさん言われます(笑)。噛むと痛い、強く噛むと壊れる、食事中にはずれる、見た目が悪い、などなどです。ブリッジに関しては、前後の歯がすでに被り物であるならばブリッジでも良いと思います。ただし、欠損本数が多い場合は保険ではブリッジが認められていません。神経のない歯はいずれ割れてしまうことが多いです。インプラントの問題点は費用が高額である、外科処置が必要、素材が金属である、喫煙者は不適応(ウチだけのようですが・・)、歯周病の管理のできる人が適応(定期検診に来ない人は不適応)、定期検診にだけ来ても普段あまり磨いていないと必ず脱落します。3ヶ月に1回来て、1時間だけ歯磨きしてもムリ。(笑)
結局は「天然歯が一番。インプラントは歯の代わりじゃなくて、歯の無いところの代わり。」だということを患者も歯医者も充分に理解していれば、どれだけバッシングに遭っても「やはりインプラントは素晴らしい」と思えるんじゃないでしょうか。これだけインプラントの悪いネタが多くなってきているので、一つ白状しましょう。私がインプラントを始めて数年経過した頃から、ずーっと気になっている問題です。それは「インプラントの素材はチタン(金属)」であること。お口の中にいろいろな金属を混在させたくないんですよね。これって、ニュースレターのネタとして良く出てくる話ですね。「口腔内金属が悪さをする」「身体に悪い電流」系の話です。これがインプラント治療を患者さんに薦める時、私の喉にいつも引っかかっている魚の小骨なんです。
バイオレゾナンス学会のネタをニュースレターに書き始めて3年経ちます。実習で落ちこぼれになる講習会に、なんと3年間も通っているんですよ。マジメというか、アホというか、自分でも笑ってしまいます。あの学会に来ている先生は玉石混交ですが、会長の矢山先生はホンマモンです。携帯電話もイヤホンで使うし、ハイブリッドカーには乗らないし、入院患者に出す野菜、果物は50度洗いするし、口腔内金属は全部はずさせるし・・・。彼の患者さんになると日常生活は非常に大変です。でも、悪性腫瘍やリウマチが治るならそういう生活はOKと言える方にはおすすめです。果たして何割の方がOKと言うでしょう??私も金属は使いたくないんですが、インプラントだけは無理だったんです。以前にジルコニアインプラントのことを書いたことがあります。しかし、アバットメント部分と一体になっていて非常に使いにくく実用的ではありませんでした。今回、改良されて使いやすくなりました。喉に引っかかる骨のないインプラントなので、非常にうれしいです。このジルコニアインプラントの評価は85/100です。実績がないこと、熟成期間が長いこと(3〜6ヶ月)、ちょっと高額なこと(今のところ45万)が欠点です。
最後にバイオレゾナンス医学会の立場から根管治療について書いてみます。また別の「ものさし」を使うので非常にややこしいことになりますが、私の中の大いなる悩みを共有して頂くために(笑)簡単に説明します。1910年代に「病巣感染説」という考え方がありました。慢性扁桃炎や歯周病、根尖病巣などが「病巣」となり、腎臓や心臓など離れた臓器に病気を起こすという考え方です。抗生物質の登場や臓器別診療科の普及で一度は完全否定された考え方ですが、近年復活してきてネットで検索するとネフローゼと扁桃炎に関する話がたくさん出てきます。「巣」はいろいろな疾患のベースになる病気なので、それを除去することが第一選択となります。あまり病巣というイメージがありませんが、歯周病の歯周ポケットも「巣」です。ですから病気を避けるためには、キレイな口腔内を維持し、歯周病を防ぎ、虫歯にならないこと、虫歯になっても大きくしないで神経を取る治療をしないこと、神経を取る場合には完璧な根管治療をしてもらうことに尽きます。私が根管治療の完璧さと歯周病の無い口腔内を求める理由はここにもあります。電話がかかってきた友達の旦那さんにはすでに根尖病巣があるんでしょうから、バイオレゾナンス的には抜歯が最善の治療です。その後は入れ歯かジルコニアインプラントになります。そうなると頭の中に浮かんだ計算式は30x7=210ではなく45x7=315です。あしからず。(笑)